【他人の家の上を横切ってもいい?】ドローンと民法についてくわしく解説

この記事は約6分で読めます。

ドローンは私たちの生活において急速に存在感を増しています。

個人から企業まで幅広いユーザーがドローンを手にするようになり、その用途も空撮や配送、農業、災害救助など多岐にわたっています。

ところで、ドローンの飛行には事前に申請が必要な場合があるというのをご存知でしょうか。

じつはドローンの飛行には航空法や小型無人機等飛行禁止法などの法律によって、さまざまな制限があります。

でも自宅の庭で飛ばすなら誰にも迷惑かけないから大丈夫だよね?と、なんとなく思っている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、私有地でのドローンの飛行についてくわしく解説しますので、ぜひ最後までお読みいただけるとうれしいです。

当ブログでは、他にもドローンに関するさまざまなトピックについて詳しく解説しています。

これからドローンをはじめたいという方や、ビジネスにドローンを活かしたいという方に役立つ情報をお届けしていますので、他の記事もぜひお読みいただき、いっしょにドローンの世界をより深く学んでいきましょう。

自宅の敷地内でも航空法は適用される

自宅の敷地内であれば自由にドローンを飛ばしてよいと思われている方もいらっしゃるかもしれません。

しかし結論から言うと自宅の庭であっても、必ずしも自由に飛ばしてよいわけではありません。

ドローンの飛行は航空法という法律によって規制されています。

たとえ自宅の敷地内であっても、法律に定められた場所や方法では原則として飛行が禁止されているのです。

以下のような場所や方法で飛ばす場合には、国土交通大臣の許可が必要です。

•人口集中地区 •地表または水面から150m以上 •日没から日の出までのあいだの飛行 •操縦者が直接目視できない範囲での飛行

たとえば午後9時に自宅の庭でドローンを飛ばしたいのであれば、前もって夜間飛行の許可をとらなければなりません。

また住宅地は一般的に人口集中地区に該当することが多いため、その許可も必要になるでしょう。

このように自宅の敷地内であっても、航空法が適用されますので、十分注意しましょう。

他人の私有地の上を飛行させるなら許可をとったほうがよい

私有地が「第三者」の所有の場合は航空法だけでなく民法の規定についても配慮しなくてはなりません。

具体的には、ドローンの飛行経路下に他人の私有地があった場合が該当します。

民法第207条では、土地の上空にも所有権が及ぶとされています。

そのため、他人の家や敷地の上空をドローンで飛行する際には、所有権侵害の問題が生じる可能性があります。

法律に明確な規定があるわけではありませんが、通説では300m上空までは権利が及ぶとされています。

しかしドローンと土地所有権の関係について、行政は以下の見解を公表しています。

第三者の土地の上空において無人航空機を飛行させるに当たって、常に土地所有者の同意を得る必要がある訳ではない

これらをあわせて考えると、

①民法は所有権にもとづく上空使用権を認めているものの

②その土地の上空を、第三者がドローンを飛行させるにあたって、必ず所有者の同意を得なければならないわけでもない。

ということになります。

ここからわかるのは、所有者の許可をとるかどうかは当事者が個別に判断してほしいということでしょう。

当事者からすると、すっきりしないあいまいな表現に感じられますが、こうした言い方にしているのにはしかたのない側面もあります。

もし民法が認める権利を完全に保護すべきということになれば、飛行経路下にあるすべての私有地の所有者の許可を常に得なくてはならないことになります。

しかし実際には飛行させる場所や高度、目的によって、許可をとるほどでもないというケースは十分にありえるでしょう。

わざわざ家に事前訪問されたり、書類にサインさせられたりするのがわずらわしいと感じる人もいるでしょう。

手続の簡素化はドローンの普及にとってもっとも重要な課題のひとつですから、その意味で国の打ち出した見解は、今後のドローン業界の発展を考えた柔軟な対応ともいえます。

とはいえ、土地所有者の権利が民法上認められているのも事実です。

無用なトラブルを避けるためにも、できるかぎり所有者の了承を得ておくことが望ましいですが、事前の通知をしておくだけでずいぶん印象はよくなるはずです。

具体的には、ビラを配布したり、自治体に申し出て近隣住民への告知をしてもらったりなどするとよいでしょう。

空撮するなら肖像権やプライバシーに徹底的に配慮する

空撮では、肖像権やプライバシーの権利にも配慮する必要があります。

肖像権とは、人の容姿や風貌を無断で撮影したり、公開したりされない権利のことです。

法律に直接明記されてはいませんが、憲法13条から導かれる権利とされています。

芸能人やスポーツ選手など有名人の写真の無断使用で問題になることが多いですが、一般人の写真であっても肖像権は保護されます。

例えば、一般人の写真が無断でSNSに掲載され、本人が特定されるような状況では、肖像権の侵害が成立する可能性があります。

撮影前に必要な許可を取得したり、映り込んだ人々に対して説明を行うなどの配慮も大切です。

特に映像をインターネットへ公表するなど拡散性の高い場合には、じゅうぶん注意が必要です。

編集段階で個人が特定されないようにモザイク処理を施すなどの対策を講じることも忘れずにおこないましょう。

プライバシーの権利とは、他人に知られたくない自分の情報を勝手に公開されたりしない権利のことです。

肖像権同様、法律に明確に定められてはいませんが、判例で認められています。

肖像権と似たようなものと考えて差しつかえありませんが、その性質上、一般の人よりも有名人のほうが認められにくいといわれています。

たとえば政治家の個人情報やスキャンダルは本人が知られたくないからといって、プライバシー情報として守られては困ります。

それらの情報は有権者の投票行動にとって重要なものとなりえます。

このように、ひろく知られたほうが社会のためになると一般に考えられるような公益性の高い情報は、プライバシーの権利を認められにくい傾向にあります。

一方で、一般の人のプライバシーの権利は比較的厚く保護されており、注意が必要です。

ドローンに関連してプライバシーの権利が問題となるのは、空撮で撮影された映像に第三者やその私生活が映り込んでいる場合です。

たとえば空撮をした映像に人家が映っていて、その庭に所有者らしき人物も映り込んでいたとします。

もし人物が特定できてしまえば、その映像をもとに住所や生活ぶりなどの情報も知られてしまうことになります。

もちろんこうしたことをプライバシー権の侵害ととらえるかどうかは、人それぞれです。

プライバシーの権利の侵害は客観的な事実だけで認められるわけではなく、本人が被害を受けたと感じるかどうかによっても左右されるわけですから、確実に侵害でないと言い切れるものでもありません。

事前に映り込むのがわかっている場合は許可をとったり、偶然映り込んでしまった場合には映像にモザイクをかけるなどして、不要なトラブルに発展する可能性はできるだけ排除しておきましょう。

まとめ

  • 自宅の敷地内であっても、場所や方法によっては航空法に定められた許可をえなければ、勝手に飛行させることはできない。
  • 空撮するなら肖像権やプライバシーの権利にじゅうぶんに配慮する。

コメント

タイトルとURLをコピーしました